第9回 いのちのあり方


宮大工棟梁 故西岡常一(にしおか つねかず)氏の知恵と言葉に心うたれる。

世界最古の木造建築 法隆寺の解体・修理に20年間たずさわり、

「いのちを見る目」「棟梁としての腕」

を磨いた人の経験と知恵はハンパではない。

今回は1400年の風雪に耐えた

「木のいのち」を語る言葉に耳を傾けたい。

石でも鉄でもなく、生きものである木によって建造された法隆寺が、

なぜ今なお朽ちることなく、

当時の姿をとどめ現役でいられるのか、

西岡氏の言葉からはその理由の核心が響いてくる。

根底にあるのは「木も人間もみんな自然の分身」という考え。

人が「十人十色」であれば木もやはり「十本十様」の性格がある。

木のクセや性質をいかし、

その長所を組み合わせることが長生きさせる秘訣だそうだ。

法隆寺のような伽藍に用いる木はどのようにして選ばれるのか、

まずそこから見てみよう。

宮大工としての口伝に

「木を買わずに、山を買え」という教えがある。

木は伐採されてから見たのではダメで、

山のなかで立っているうちに見ないと本当の性質は見抜けない。

一つの山の木でもって一つの建物を作るのが理想だそうで、

宮大工の仕事は切り出された木を選ぶのではなく、

山のなかでいい木々に出会うことから始まる。

次に木の用い方。

「木組みは寸法で組まずに木のクセで組め」

長持ちする強い建物を造るには

規格(寸法)がそろっているよりも、

適材適所、その場所にふさわしい性質の木を選び、組み合わせるのが重要なようだ。

組み合わせる上で大切にされるのは、何より構造で装飾は、二の次。

構造美と装飾美の違いを対比するのに、

西岡氏は飛鳥時代の法隆寺と江戸時代の日光東照宮を比較する。

法隆寺の美しさが、

構造の強さが持つ美しさであるのに対し、

東照宮は装飾のための装飾的美しさ。

二つは重厚感も耐久性もまるで異なり、

構造を軽視されて造られた東照宮は

350年で解体修理が必要であったのに対し、

法隆寺は1350年その必要がなかったとのこと。

構造の強さがいのちの長さであることがまさに腑に落ちる。

「軟構造」の強さについても触れておきたい。

地震に強いこの構造は一階の揺れがそのまま二階に伝わるのではなく、

逆方向へ行くようにできており、

大きな揺れも吸収してしまうようにできている。

素人なので当たっているか確証はないが、

最新の免震技術は木の代わりにゴムなどの柔らかい部材を用いただけで、

構造そのものは法隆寺のものと同じなのではないか。

だとしたら1400年前にすでにその構造の素晴らしさに気づき、

ゴムよりも硬い木という材料を使って、

その耐久性と強さを未来の我々に証明した飛鳥時代の匠の知恵と技術は驚嘆に値する。

法隆寺の免震技術についての参考動画

興味のある方はご覧ください。

後半部分は釈迦と弟子のエピソードです。

余談ですが、

五重塔は仏の骨=仏舎利を納める塔婆を象徴したものなので、

このエピソードが挿まれていると思われます。

https://youtu.be/CVHdzL82Ezk

今回の話で注目したいキーワードは

「いのち」「性質」「構造」「軟らかさ」

太極拳の修練はいのちの本質を理解し、

その性質の「長」を伸ばし「短」をおぎない、

軟らかさを増し、

構造を強くするもの。

生きものとして長くそして強くあるための心得は、

齢(よわい)1000年をも超える木のあり方からまだまだ多くを学べそうだ。


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