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第10回 構造の強さは中央の柔らかさにあり


前回は法隆寺に用いられた木のいのちと、

そのいのちの強さを最大限に引き出す建築構造について触れた。

今回はその構造の強さの秘密についてもう少し深く立ち入ってみたい。

套路や推手のとき、

呉式太極拳が我々に求める人体の内部構造と

法隆寺の建築構造は本質的に同じメカニズムから成っていると思われる。

両者がともに志向するのは

「中心の柔らかさによる安定」

「外圧に左右されない中心の安定」

千年の時を超え滅びることのない堅牢な木造建築、

その代表として注目されるのが法隆寺五重塔。

高さ30m以上ある塔を支え続けたのは「心柱(しんばしら)」である。

その心柱はなぜか周囲の梁(はり)や柱に固定されていない。

その理由は、

地震で揺れが起こったとき柱が建物本体と逆方向に動き、揺れを抑えるためだ。

実は東京スカイツリーにもこの心柱構造が用いられている。

柱は鉄筋コンクリート製で375m。

下の1/3が塔体に固定され、それより上は自由に動くようになっている。

地震のとき心柱は塔体と異なる周期で揺れ、

互いの揺れを相殺し、

安定の乱れを最小限におさえる役割をになう。

人体において心柱の役割をはたすのは、

腰椎を含めた背骨である。

呉式太極拳では套路と推手において

腰椎を徹底的に

「柔らかくする」

「柔らかく使う」

ことが求められる。

もしそれが十全にできれば、

「全体構造から独立した動き」

「全体を瞬時にコントロールする動き」

「外からの力で外部が封じられても闊達に動くことのできる内部の自由」

を獲得することができる。

腰椎は元来動きにくいもので、

独立した動きができるまでには相当な時間を要する。

しかし、要領を守り、正しい太極拳と推手を繰り返し行うことで、

全体の安定を保証する中心の柔らかさと自由度が

徐々にではあるが着実に身についてくる。

上体を上下につらぬく心柱のような

柔らかさと安定性を兼ね備える内部構造を中心に作ること、

太極修練の内面的な第一歩はこのあたりから始まる。


 
 
 

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