第26回 過剰の調整


台風9号が発生し、今回はめずらしく関東地方にも上陸した。

さらに北上し、東北・北海道の方へ進んでいるという。

影響・被害の最小限で済むことを祈るばかりである。

そもそも台風が発生するのは、以下のメカニズムが働くからだそうだ。

・熱帯地方の海水が太陽熱で温められ、大量の水蒸気を含む強い上昇気流が起こる

・上空に運ばれた水蒸気は、高所で冷やされ水となり雲へと変わる

・これが繰り返されると巨大な積乱雲ができる

・水蒸気が凝結して雲に変わるとき熱を放出する。

その熱は大気をあたため、積乱雲内部の上昇気流をますます強める。

その結果として低気圧ができる

・低気圧は地球の自転によって生まれる風にかき混ぜられ渦を巻く台風となる

私は台風を、過剰を正常にもどす地球にとって必要な営みだと感覚的にとらえている。

アンバランスを適正バランスにもどすことがうまくいかないと、

様々なところで支障が起きるのは人も地球も、また精密機器も同じ。

たとえば、真夏の暑いとき体内の過剰な熱を汗によって外へ放出できなければ熱中症になる。

パソコンの場合には処理によって生じる熱を外へうまく出せなければ故障してしまう。

日常生活において避けたい過剰はストレスの蓄積。

社会生活でストレスが生じてしまうのは仕方ないにしても、

積乱雲のようにたまって大きくなるのは防ぎたい。

捨てるという調整を入れればストレスは大きくならないのではないだろうか。

その調整は静的であるより動的であるほうが効果が高いと思う。

簡単に言えばい、静かにお酒を飲んでもさほどのストレス解消にはならず、

カラオケで大きな声を出して歌ったり、

スポーツで汗をかくといったダイナミックな動きが、

内のストレスを外に捨てるより良い調整となる。

地球上でもっとも大きな自然エネルギー現象である台風は動的調整の最たるもので、

台風一過、快い晴天に出会うのは、その調整の結果に遭遇する瞬間だ。

太極拳のゆっくりとした動きは、

外見上、動的というよりは静的見える。

動いているエネルギーも大したことはないと思われるかもしれない。

しかし、外見に反して太極拳にはものすごいダイナミズムと大きなエネルギーの働きがある。

台風同様、エネルギーを拡大させながら、中心から外に向かって渦状に広がるメカニズムが太極拳の動きの特徴だが、

台風のように急激ではなく緩やかな動きでこれを行うのは、

人体にとって結構な難題だ。

ゆっくりとした正確な動きのなかで働く、さりげなくも高度なダイナミズムこそ太極拳の妙味であると同時に難しさでもある。

「負のエネルギーを外へ捨て」「エネルギーの良循環を整える」には

過ぎたるも及ばざるもない、ちょうどいい陰陽バランスを整え保つことを本質とする太極拳が、

最良の選択の一つであることを日々の稽古で実感する。


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