第32回 秋は収蔵のとき


台風の影響などで蒸し暑さが残るとはいえ、

彼岸も過ぎ、だいぶん秋めいてきたのを折おりに実感する。

五行では季節を「春・夏・長夏・秋・冬」と分類するが、

長かった夏の陽気が減退し、今は陰気が次第に優勢になりつつある。

暑すぎず寒すぎずあいまいな時期であるがゆえに、

着るもの、口にするもの(飲食)が、なかなか決まりにくい。

しかし夏の気分に引きずられ、

薄着、冷たいものの摂取を中心とした生活を続けると、

陰陽バランスが乱れ、体調を崩してしまう要注意な時期が「今」。

万物がいちじるしく成長し盛んとなる「長」の季節・夏に対し、

秋は「収蔵」の季節。

人にとってこの時期とりわけ収蔵をこころがけなければならないのは陽気、つまり体の内外のあたたかさ。

夏に体表にあった陽気は、秋からはそれよりも深いところへもぐるらしい。

陰へと変化する天に、体の陽気を吸い取られないようにするためだそうだ。

実際私たちが風呂に入るとき、同じ温度のお湯が夏には熱く、

秋冬にはそれほどでもなく感じるのは、

体内の陽気の収まりどころの深浅に関係するという。

自然界においても井戸の水が夏に冷たく、

冬にあたたかく感じられるのは、

夏には陽気が地下を離れ、冬には地下に収まるためとのこと。

自然界と人体にもそのように共通の摂理が働いている。

その摂理に逆らわず、順(したが)って生活することが、

体調を崩したり、風邪をひいたりしたいための最も基本的なところでの予防であろう。

中医学では「肺」が秋ともっとも深く関係する内臓と考えている。

確かにゴホゴホと咳をする人を多く見かけるようになるのは、秋くらいから。

これには説得力がある。

この時期の健康をたもつには肺を潤し、温めることが重要。

豆乳、小松菜、ゴマ、チーズ、くるみ、蜂蜜、梨、牡蠣、白きくらげ、大根などがいいようなので、

心がけて食べるようにしよう。

食べものだけでなく着るものにもささやかな気遣い。

昼間との寒暖差の大きい夜、特に寝るときの薄着に注意し、

体を温め陽気を収蔵すれば今年の秋も快適に過ごせるに違いない。


0回の閲覧