福岡伸一さんの「生命」に向ける眼差しがやわらかく、
太極マインドとバリアフリーで親和する。
深く共感される。
著書『やわらかな生命』から気にかかる言葉を引用する。
「機械はかたく、生命はやわらかい」
「機械はドライで、生命はウェット」
なるほど、私たちが日々お世話になる携帯電話は、
今の生活を象徴する機械だが、
確かにかたくてドライ。
機械としての堅牢性、言いかえれば壊れにくさは、
かたさによって守られる。
反対に、生命である我われ人間は、
心も体もかたいと壊れやすい。
また、機械は精密であればあるほど水に弱いが、
人は水を生きる糧とし、
それがないと生きていけない。
両者はあまりにも好対照で、
そのことがとても面白く感じられる。
体のやわらかさ、ウェット感を維持するうえで、
太極拳は最も効果の高い方法の一つであると思う。
つまることも、止まることもない円の動き、
常なる流動性によって体そものものやわらかさ、
それだけでなく動きのやわらかさ、つながりのやわらかさが高められてゆく。
全身をゆっくり、正確に、長時間動かすことによって、
血液の流れが活発となる。
その血液によって全身にくまなく運ばれる様々な栄養素によって体の水々しさ(ウェットな状態)が保たれる。
ふたたび、福岡さんの別の言葉に耳を傾けてみよう。
「生命はモノでできているが、その本質はモノそのものではなく、モノとモノがどのように交信し、相互作用しているかという有機的な関係性。」
「そこには絶え間ない相互作用と全体性がある。」
太極拳で大事なのは、
パーツのパフォーマンスではなく、
パーツ同士のシームレスな協調性。
その協調性によってもたらされる一つの全体性。
内面と外面のつながりも含め、
そのような全体的流れであるからこそ、
太極拳の動きは体のさまざまな不調がととのう方向へ働きかけるのであろう。
太極拳の術理は生命の摂理とキレイに重なり合い、
やわらくウェットな生命のたくましさをうながしてくれる。
特に練習後に体を内観するとき、
その思いをたくましくする。