『太極拳経』に
「進みてはいよいよ長く、退いてはいよいよ促す。
一羽も加うる能わず、蝿虫も落つる能わず」(一部漢字をひらがなに改訂)
という有名な言葉がある。
特に「一羽も加うる能わず」の部分について、
呉式太極拳の考えかた、身体運用のしかたを簡単にご紹介したい。
昨日は(4月6日)師父、同門とともに屋外練習。
「春候(そうろう)」の強風吹き荒れるなか、いつも通り太極拳を行なう。
禍福はあざなえる縄のごとしで、
悪天候が思わぬ福音をもたらしてくれた。
その福音の内容について以下にフォーカス。
呉式太極拳では、
「弓歩」「虚歩」、いずれも10対0の体重配分で立つ。
「弓歩」のときは前足に10割(理合として)、
「虚歩」では後足に10割の重さを乗せる。
いずれの姿勢も、軽いほうの脚は膝まわりが緊張しない程度に伸ばす。
また「馬歩」では両かかとに全体重を集め、
足裏全体ではなく「点」で立つように心がける。
カカト加重は弓歩・虚歩・馬歩すべてに共通。
重心のかけ方もさることながら、
各姿勢において体全体の構造を決定づける「骨盤の位置」がとても重要となる。
弓歩ではできるだけ前へ、虚歩・馬歩ではできるだけ後ろへ骨盤を持っていく。
このようにして立つと初心者の人は姿勢維持にものすごい不安を感じることとなる。
バランスがうまく取れずフラフラしたり、それを解消するため力んでしまう。
でも、最初はそれが普通で当たりまえ。
ではなぜ呉式はこのような際どい姿勢の太極拳を行うのか?
これに対する答えが道教太極拳が探求することの核心。
◯ 不安定の安定
◯ 内面的柔らかさと自由度の拡大
◯ 陰の極み⇄陽の極みの大きな振子運動の中で一瞬たりとも止まらない、力まない身体運用
これらのことを少しずつ改善し、身につけていくため呉式太極拳では、
あえて体重配分10対0の極端な姿勢で太極拳を行っている。
先がもう少し長くなりそうなので、続きは次回へ。