第60回 春の眠いと太極拳の意外な関係


「春眠暁を覚えず」

とはよく言ったもので、

朝、昼を問わず春はワケもなく眠い。

この感覚、多くの方が経験されていることと思う。

今回は春特有の睡魔と太極拳との意外な接点について。

春のワンシーズン前は冬、「収蔵」の季節。

動物と同じく人はよく食べよく飲み、体内に栄養をたくわえる。

また寒さ対策として熱の放出で体温が下がらないように血管を収縮させる。

脳には血液が集まるが、他の部分の血流は低下する。

冬に末端が冷えるのは血液循環の不良が要因の一つ。

一方、春は「開放」の季節。

冬に消化しきれなかった老廃物の解毒、

たくわえた栄養の代謝のため肝臓がにわかに活性化する。

体を季節に順応させるべく肝臓は日々ハードワークにいそしんでくれている。

冬場収縮していた血管も広がり全身の血流も活性化される。

血液循環が全体的に良くなり、脳以外の部位へも血液が多く流れ出すため

冬と比べ春には脳内の血液量が少なくなる。

春の眠さの原因の一つは脳内血液量の低下によって招かれる。

この他にも、

季節の変化による「交感神経」「副交感神経」のモードの切り替え、

眠りを誘うホルモンであるメラトニンの分泌などが春の眠さの原因に関係してくるようだが、

ここでは立ち入らない。

さて、太極拳。

太極拳練習の後には体がポカポカと温まり、

血液循環が非常に良好な状態にあることが実感される。

当然これは多くの方が経験されることであるが、

太極拳を行なっている最中にはどういう状態が望ましいか言えば、

頭がボーっとしてわけもなく眠い状態。

まさに春の眠いと同じ状態が良き太極拳の条件なのです。

太極モードになることによって、

意(脳)の働きが最小限になり、反対に全身の血流が最大限に活性化される。

平常時血液が流れていない(流れにくい)、毛細血管にまで血液が流れるので、

その分、脳の血液量が減り「春の眠い」と同じ眠さにおそわれるというワケ。

このような状態になるように、

太極拳の練習中には脳を極力OFFモードにして、

全身の協調性に動かされるかのごとく動いていきたいものですね。

余談ですが、中医学では「肝」の状態は眼に表れやすいそう。

冬場ためていたもののツケを春に支払うべく肝臓がせっせと働いてくれている春に、

眼を休めるべく眠くなるのは理にかなっていると思いませんか。


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