型の練習を行うとき、太極拳では「1・2・3」などの号令をなぜ用いない?
理由の要点は2つ。
① 太極拳の動きは分節できない(動きの連続性に真髄がある)
② 動きと動きの「あいだ」に豊富な要求がある
(その要求通りに動くことで連続性が守られる)
① ②は一つのことの両側面で、
大切なのは固定した形(一つの姿勢が決まっている状態)ではなく、
緩急・強弱・濃淡のムラをなくし動きを連続させること。
「あいだ」で何が起きているのか、
「あいだへの要求」を少し拡大してみたい。
たとえばどの武術にもある「方向転換」。
◯ 原則、腰椎から動きはじめる
◯ 動と静を使い分ける(骨盤と腰椎の分離)
◯ 「開・合・咬・回胯」を用いて上半身と下半身の調和をたもつ
◯ 体の柔らかさ、動きの滑らかさを壊さない
◯ スピードは変化しない、まして止まらない
など外から見えにくい内面的要求が多い。
上記は氷山の一角で、
この他にも太極拳には「あいだの消息」を明解に定める教えが数多くあるが、
今回はこれ以上深入りしない。
連絡動作というあいまいなもの、内容的にうすいものになりやすい型の動作と動作の「あいだ」を、
太極拳では体が不合理・不調和な状態におちいりやすい難しさ、
また何ぴとにも共通の弱点がひしめく難所と位置づける。
数ある「あいだへの要求」はそれらを少しずつ緩和してくれる教えに他ならない。
太極修練の柱の一つは「あいだの追求」と言って過言ではない。