前回の腕につづき、今回は脚の三節について。
腕と同じく脚も「根・中・梢」三つの節で構成されるが、両者には決定的な違いがある。
腕は重さから自由。それに対し脚は常に重さの束縛を受ける。
より正確に言えば、武器など何も持たなければ、重力と自重を除き、腕は重さから解放されている。
脚はどうか?
我々が直立している限り、脚は常に上半身の重さを受け止め、支え続けている。
普段、膝や腰に問題をかかえている人は少なくないが、上からの重さが自ずとのしかかる胯(骨盤)・膝がもし不自然・不合理な動きをすれば、そのひずみが膝・腰に現れて当然であろう。
上体の重さを常に支えながら動くパーツの取り扱いはよくよく注意しなければならない。
繊細かつ脆弱な胯(骨盤)や膝の取り扱いを伝統太極拳ではどのように行なっているか具体的に見てみよう。
骨盤と膝は本来の場所に収まり、可能な限りそこからズラさないのが鉄則。
本来の場所とは予備式のように肩幅で自然に立ったとき、あらゆる関節が脱力・協調し、骨格全体がもっとも収まりのいいところ。
膝に関しては「曲げる・伸ばす」は備わった機能の範疇だが、「ひねる・横にズレる」は膝の役割・機能から逸脱する。
程度の軽い動きで即座に壊れることはないかもしれないが、繰り返し練習する型のなかでこのような不自然な動きが度重なれば故障はまぬがれない。
太極拳では弱い膝の「保護と補強」を兼ねて、脚を次のように運用する。
・「根・梢」節から膝だけが飛び出ないようにこころがけ、三つの節をキレイに整列させる(腕と同じ)
・脚を動かすときは三つの節の全てを同時に同じ方向へ向ける。三つで一つのまとまりを崩さない。
・三つの節の動きを一つにまとめる主導的役割は根節である「胯」が担う。残りの中節(膝)・梢節(足首)は胯の動きに協調し、牽引されるだけ。
これがいわゆる、開胯・合胯・閉胯・回胯である。
次回へつづく