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第92回 楽しき永遠の未完成


縁あって2018年11月から浜松・三ヶ日の地で呉式太極拳を指導させていただくことになった。呉鑑泉-馬岳梁・呉英華-師父 沈剛に伝えられた呉式太極拳の精華を地域の方々へ一つひとつ丁寧にお届けしたい。

一修行者として痛感するのは、太極拳に近道や速成はありえないということ。あるのは正しい教えにうながされる小さくはあるが着実な一歩一歩。

ゆえに地道な積み重ねに時間・取り組みを惜しまない心の姿勢がそのまま太極拳と向き合う姿勢となる。

お伝えしたいのは、代々伝承された正しい教え。

また、教えによって変遷する体のなかの感覚。

食べもののおいしさを言葉で正確に表現しにくいように、体のなかの感覚を人と共有・同期するのは難しい。

しかし、幸いにも太極拳には套路(型)・推手という形ある教えが残されている。

これらの動きを観れば、体のなかがどのような状態で、どのように動いているか一目瞭然。

感覚共有のための正確な言語と文法がここに成立する。

それらを駆使して、感覚の細かい者が粗い人をリードし、少しずつ細かい方へと導いていく。

太極拳は一人一人の体の状態を観ながらのカスタム・メイドの授受が望ましい。

粗いところ、硬いところ、かたよっているところを修正、うめていきながら少しずつ進んでいく。時間はかかるが、かけた時間だけ体が変化する。

「太極拳は永遠の未完成」

と言われるが、その行間にはどこまでも次なる・新たなる変化を許容する教え、練習方法、そして体の状態が続くことが読みこめる。

独特な前傾姿勢を一例として、古典中の古典の作法にのっとってつくられた呉式太極拳の套路と推手を現代風にアレンジしたり、足したり引いたりすることなく、師父 沈剛から伝えられたままお伝えすれば、私自身も現在進行形で体験する、永遠の未完成の世界へご案内できると思っている。


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