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執筆者の写真呉式太極拳 順展会

第13回 不朽ということ


書店で『百年続く企業の条件』(朝日新聞出版)という本が目にとまり、手にとった。

題名から連想される内容に興味をもったからであるが、

企業の競争力=生命力の永続性と太極拳の術理は

相通じるところがあると思われ、早速一読してみた。

「活発な生命力の永続性」という視点で

両者の共通点を私なりに読み解いてみたい。

老舗企業として大事なことを漢字一文字で表現すると、

トップ3に「信」「誠」「継」と穏当なキーワードが並ぶが、

トップ10には「変」「新」という意外な言葉も入る。

本のなかでも「老舗とはしなやかなもの」として論じられ、

何かを守ってきただけでなく、

何かを変えられたからこそ生き残ることができたケースが多いようだ。

老舗企業は普通の企業よりも、

大きな社会の変化に慣れており、

また変化に対して耐性があるからこそ、

社会を根底から揺るがす大惨事をも乗り越え

命脈を保つことができたのであろう。

時計の針を百年もどせば、

関東地域に限定しても、

  関東大震災

  第二次世界大戦

が時間枠に入る。

老舗企業はこの二つにも押しつぶされることなく、

乗り越えられたということだ。

いずれも首都圏を灰燼に帰すほどの壊滅的ダメージ与えたものであるが、

それでも倒れなかった老舗企業の生命力は驚異と言うほかない。

常識では不可能なことを可能ならしめた老舗企業ならではの教えを見てみよう。

「作り手こそ真の使い手であれ」

単に作るだけでなく、

使い手のかゆいところに手が届くようなモノづくりは、

真の使い手でなければできないということであろう。

太極拳の場合、

ベクトルは逆方向となり、

使い手(我々)は作り手が型のなかに埋めこんだ

ほんのかすかなかゆいところに手と感覚が届くようになるまで

型をやりこまねばならない。

のれん分けを戒めた家訓として

「木の根は分けるな、実った果実を分けよ」

という言葉も含蓄が深い。

太極拳では、

「果実を求める前に根を広げてはれ」

ということになろうか。

根をはることよりも、表面的な技の解釈に気をとられてしまうと、

体は早く枯れてしまう。

まさに「原料に勝る技術なし(蔵元の教訓)」で、

私は太極拳の根本は原料づくりに他ならないと思っている。

「出るをおさえて入るをはかる」

これは出納のことを言っているのであろうが、

太極拳はエネルギーの「出」をおさえ、「入り」を増やす練習だ。

だから心身の調子を長期間いい状態に保つことがきる。

「出」と「入り」のバランスの悪い競技は長く続けることができず、

短命で終わってしまう。

最後に印象に残る言葉をもう1つご紹介したい。

「一口食べておいしいのではなくて、食べ終わって、

また明日も食べたいと思えるようなものを作っていきたい」(ヤマサ醤油)

太極拳の練習も、

一回やってもまたやりたい、

今日やっても明日またやりたい練習でありたい。


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