「ミッシングリンク(失われた環/鎖)」、
もともと生物学で使われていた用語で、発見されていない中間形の化石のこと。
たとえば類人猿の化石。
有名なダーウィンが進化論を発表した当時、
サルからヒトへの進化の過程をつなぐ化石が発見されておらず、
彼は著書のなかで「将来、必ずヒトとサルを結ぶミッシングリンクが発見されるに違いない」と記したそうだ。
果たして予見通り、猿人(アウストラロピテクス)、ジャワ原人、ペキン原人、ネアンデルタール人、新人(クロマニヨン人)など数々のミッシングリンクが次々に発見されたことは
ご案内の通りである。
武術レベルの進化(レベルアップ)の過程においても、
ミッシングリンクへの気づきが重要な役割を立たす。
◯体の部分と全体をつなぐミッシングリンク
◯心と体をつなぐミッシングリンク
◯天・地・人をむすぶミッシングリンク
など。
武術のミッシングリンクは、教えだけでは十全に受けとることのできない、不立文字の未知の領域。
未知から既知へ、既知から熟知へ至る決定的なリンクを手にするには、「体得」しかない。
稽古を重ね、経験と感覚の成熟だけがリンクへの唯一の手がかりなのだ。
気づきは自身の体験から浮かび上がってくる一つの答え。
気づいたときは、すなわち全体に何らかの大きな変化が起こるときで、
それを今風に言えば、心と体を運用するOS(オペレーティング・システム)がメジャー・アップデートされるときなのだ。
武術の特殊用語として、もし私がミッシングリンクを超訳すれば、「禅機」という言葉をあてるだろう。
稽古されている方にはこの感覚、共有していただけるのではないだろうか。