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第55回 天人相応


春の息吹があちこちで見受けられる陽気になった。

「秋は空から、春は地面からやってくる」という言葉通り、

草木が芽吹き、色とりどりの花がこぞって咲きはじめている。

地面深くにもぐっていた「陽気」が目覚め、

地表まであがってきて活発に働くようになったことが、

草木や花々の生長をうながしている。

人もまた自然の一部で、

心身の変化と天地の運行は足並みがそろう。

卑近な例で恐縮だが、

毎年春の今時分になると背中が無性にかゆくなる。

空気が乾燥した冬の時期ではなく、

空気もうるおう春の今「なぜ?」と不思議で仕方がなかったが、

「天人相応」のことわりを理解すると、

「なるほど、かゆいのは今だから」と納得がゆく。

冬場、体の深いところに収蔵されていた陽気が体表にまでのぼってきて、

それがかゆみの原因になっているのだ。

実際風呂に入ると、お湯の陽気と体の陽気がぶつかり合うシナジー効果で、

かゆさ倍増、

一日のうちで最もおのれの忍耐力が試される瞬間となる。

笑い話はさせおき、

春は「木(もく)」の気が盛んになるとき。

植物が芽吹き、花を咲かせるのにふさわしい時期なのだが、

この時、人体においては「肝」の気が強くなる。

冬場よりも心拍数が上がり、血液循環も速くなる。

当然「肝」への負担が大きくなり肝臓が疲れやい。

アルコールがお好きな方は少し量を控えめにして、

肝気を養うことを普段より少し優先させたほうがいいかもしれない。

また肝臓だけでなく、

春は自律神経の活動も乱れがちで、

ものごとに集中しにくかったり、

理由もない眠気や倦怠感におそわれたりする。

「心乱れれば百病生し、心静かなれば万病やむ」というように

心も体も乱れがちな今だからこそ、

静かに太極拳にいそしんで心身ともにととのえて行きたい。

また冬のあいだ栄養をたっぷりと蓄えた春野菜や春の果物(菜の花、三つ葉、ふきのとう、たけのこ、春キャベツ、野ぜり、いちご)など旬のものをしっかりと食べたい。

心も体も、冬から春仕様へのシフトチェンジを滞りなく、うまく行うためには、

太極拳、食養生、どちらもオススメである。


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