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第81回 胯について


⬛︎ 動きが突っかかりやすい難所

太極拳練習のとき全身の柔らかさ・協調性、また動きの連続性には誰しも配慮するところであるが、体はなかなか言うことをきいてくれない。

なぜか?

体には随所に短時間では変わらない、変わりにくい関門があるから。

とりわけ不器用にして硬い最大の難所が「骨盤」。

動きの流れはこのまわりで突っかかりやすい。

胯の具体的内容に進む前に、先に呉氏の骨盤の取り扱い方を腰椎との関連において簡潔に触れておきたい。

⬛︎ 腰に悪いNG歩行

骨盤が硬く不器用だとどうなるか、まずは典型的なNG例から。

ファッションショーのランウェイを歩くモデルの姿をご想像いただきたい。

肩幅ではなく無幅の一直線の足幅を保ちたいため、モデルは骨盤を左右に揺らしながら歩く。

服のデザイン性、機能性を伝えるにはその歩き方がマルかもしれないが、武術の上ではバツ。

体のブレにより動きが見えてしまう(次の動きが予測できる)のも論外だが、骨盤のブレに腰椎が連動し、腰椎が左右に波うっているのは見るだに痛々しい。

この歩き方では、

・腰を痛める→体に弱点ができる

・痛みが足かせとなり動きづらくなる

ため身法・養生両面でバツなのである。

腰は不合理な姿勢・動きから深刻なダメージを負いやすい繊細なパーツ。

体幹の太い部分にあるにもかかわらず、腰椎まわりには筋肉が少ない。逆に言えば、腰椎は遊び余地の相当に広い環境に置かれている。腰椎が痛み・故障につながる不自然な動きをしてしまうのは、ズレを妨げ、正しいポジションをサポートする筋肉の量が体の他の部位に比べて少ないため。腰を痛めやすい大きな原因の一つは、その構造にあることを肝に銘じておきたい。

⬛︎ 太極拳の腰椎・骨盤の扱い方

そのように弱い、また放恣な動きに傾きやすい腰椎、加えて腰椎との関係が切り離せない骨盤を、伝統太極拳ではどのように扱っているか、その歩行要領を、以下少し具体的に。

・左右の骨盤を分離・独立させる

・腰椎を骨盤との癒着から解放する

・腰椎・骨盤をそれぞれ自律的に運用する

骨盤・腰椎の自律は体の合理性、動きの連続性を追求するうえで不可欠のもの。全身の柔らかさ・協調性、渋滞のない動きの連続性はこれらにより担保される。

逆に言えば、断点やスキの遠因は骨盤・腰椎の硬さ、不器用さ、不合理に求められることが多い。

太極拳練習の柱の一つは、骨盤・腰椎の硬さ・不器用さを少しずつ改善・突破することにある。

次回へつづく。


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